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【症例研究】一卵性三つ子への3種の矯正テクニック比較─ Tip-Edge®・ツイード・MBTによる治療期間・効率・安定性の縦断的検証

本コンテンツは歯科医師・矯正専門医(医療従事者)向けの臨床情報です。一般の方への情報提供を目的とするものではありません。

1. 症例概要

症例概要

項目内容
研究デザイン縦断的比較研究(査読付き論文)
出典International Journal of Orthodontics, Vol. 23, No.4, Winter 2012
著者Dr. Ricardo Medellin F. DDS, MS(メキシコ工科大学教授)
患者一卵性三つ子女性(10歳8ヶ月)
診断I級不正咬合、重度の上下叢生、若干の垂直成長傾向
治療計画三名とも第一小臼歯4本抜歯+固定式エッジワイズ装置
使用テクニックTip-Edge®(TP Orthodontics)
ツイード(Ormco)
MBT(3M Unitek)
治療期間Tip-Edge®:15ヶ月
ツイード:47ヶ月
MBT:47ヶ月
使用アーチワイヤー本数Tip-Edge®:6本
ツイード:13本
MBT:14本
治療結果三名とも治療結果は同等であり、指導医の臨床評価でも満足のいくものと確認
長期安定性治療後7年までの咬合の安定性、セファロ分析の変化、骨の成熟度を確認
項目
研究デザイン
出典
著者
患者
診断
治療計画
使用テクニック
治療期間
使用アーチワイヤー本数
治療結果
長期安定性
内容
縦断的比較研究(査読付き論文)
International Journal of Orthodontics, Vol. 23, No.4, Winter 2012
Dr. Ricardo Medellin F. DDS, MS(メキシコ工科大学教授)
一卵性三つ子女性(10歳8ヶ月)
I級不正咬合、重度の上下叢生、若干の垂直成長傾向
三名とも第一小臼歯4本抜歯+固定式エッジワイズ装置
Tip-Edge®(TP Orthodontics)
ツイード(Ormco)
MBT(3M Unitek)
Tip-Edge®:15ヶ月
ツイード:47ヶ月
MBT:47ヶ月
Tip-Edge®:6本
ツイード:13本
MBT:14本
三名とも治療結果は同等であり、指導医の臨床評価でも満足のいくものと確認
治療後7年までの咬合の安定性、セファロ分析の変化、骨の成熟度を確認

2. 治療比較データ

治療前後セファロ分析値(Pre → Post)

計測項目Tip-Edge® PreTip-Edge® Postツイード Preツイード PostMBT PreMBT Post
SNA85°85°85°88°85°87°
SNB77°81°79°84°78°82°
ANB8°4°6°4°7°5°
FMA28°16°30°18°28°18°
IMPA94°111°90°110°95°110°
1-SN93°107°92°112°98°108°
1/1137°120°142°118°129°115°
L1-APo+1mm+3mm0mm+3mm+3mm+3mm
Wits+4mm0mm+4mm0mm+2.5mm0mm
計測項目
SNA
SNB
ANB
FMA
IMPA
1-SN
1/1
L1-APo
Wits
Tip-Edge® Pre
85°
77°
8°
28°
94°
93°
137°
+1mm
+4mm
Tip-Edge® Post
85°
81°
4°
16°
111°
107°
120°
+3mm
0mm
ツイード Pre
85°
79°
6°
30°
90°
92°
142°
0mm
+4mm
ツイード Post
88°
84°
4°
18°
110°
112°
118°
+3mm
0mm
MBT Pre
85°
78°
7°
28°
95°
98°
129°
+3mm
+2.5mm
MBT Post
87°
82°
5°
18°
110°
108°
115°
+3mm
0mm

治療効率の比較

項目Tip-Edge®ツイードMBT
ブラケットTP Orthodontics .022”スロットOrmco .022”スロット3M Unitek .022”スロット
治療開始2002年7月2002年1月2002年1月
治療終了2003年10月2005年11月2005年11月
治療期間15ヶ月47ヶ月47ヶ月
アーチワイヤー本数6本13本14本
第二大臼歯バンドなしありあり
アンカー装置不要ナンスのホールディングアーチトランスパラタルバー
項目
ブラケット
治療開始
治療終了
治療期間
アーチワイヤー本数
第二大臼歯バンド
アンカー装置
Tip-Edge®
TP Orthodontics .022”スロット
2002年7月
2003年10月
15ヶ月
6本
なし
不要
ツイード
Ormco .022”スロット
2002年1月
2005年11月
47ヶ月
13本
あり
ナンスのホールディングアーチ
MBT
3M Unitek .022”スロット
2002年1月
2005年11月
47ヶ月
14本
あり
トランスパラタルバー

※三名の患者の協力度は、1~10段階の評価で全員が8または9と報告されており、治療期間の差は協力度によるものではないと論文中で考察されている。

3. 臨床写真ギャラリー

※本臨床写真は原論文(International Journal of Orthodontics, 2012)より著者の承認を得て掲載しています。個人特定リスクを避けるため、顔貌が写る写真は掲載していません。

STEP1:治療前の記録

10歳8ヶ月の三つ子女性の治療前記録。フレームの色(赤=イングリッド/Tip-Edge®、黄=モンセラット/ツイード、緑=パメラ/MBT)で識別した。軟組織側貌のシルエット(図2)は極めて類似しており、手首のX線写真(図3)から骨の成長度合いは全員同等で思春期の成長期にあることがわかる。

STEP1(続き):石膏模型・口腔内所見

石膏模型(図4)からはI級不正咬合だけでなく歯冠の形状や大きさの類似も見てとれる。治療前の側頭部X線写真をSella-Nasion線のSellaに併せてトレーシングし(図6)、三姉妹の骨格の類似性を示した。

STEP1(続き):口腔内写真

図5:口腔内写真(上:正面咬合、中:上顎口蓋側、下:下顎舌側)

Tip-Edge®(赤)/ツイード(黄)/MBT(緑)

口腔内の写真から三つ子の叢生と上下顎のアーチの形状が類似していることがわかる。

STEP1(続き):ブラケット

イングリッド(赤)はTip-Edge®ブラケットとストレートアーチワイヤーテクニックを、モンセラット(黄)はオームコ社のツインエッジワイズブラケットでツイードシステムを、パメラ(緑)は3Mユニテック社のMBTブラケットを用いて治療された。

STEP2:抜歯決定とスペース分析

必要とされるスペース、下顎切歯の位置、I級咬合、軟組織側貌を分析した結果、三名とも、エッジワイズ装置を装着する前に第一小臼歯を4本抜歯することを決定した(図10)。

STEP3:ツイード・MBT治療開始(2002年1月)

イングリッド(赤)の治療については、装置やテクニックなどの治療方針が決まっていない。抜歯もされていない。モンセラット(黄)はオームコ社のツインブラケットを装着し、.016”のニッケルチタンワイヤーで治療を開始。パメラ(緑)には3MユニテックのMBTブラケットを装着し、.016”のニッケルチタンワイヤーで治療を開始した。

STEP4:Tip-Edge®治療開始(2002年7月)

イングリッド(赤)にシングルウィングのTip-Edgeブラケット(TP Orthodontics社)を装着し、張力が高い.016”のステンレススチールワイヤーを使用した。この時点で他の二名はすでにアライメントとレベリングの段階を終えていた。

STEP5:過蓋咬合の解消とスペース閉鎖(2003年3月)

イングリッド(赤)のTip-Edgeに.022”のステンレススチールワイヤーを装着し、過蓋咬合を解消。抜歯スペースを閉鎖した。モンセラット(黄)・パメラ(緑)はこの時点でII級咬合の直接的な改善はまだ行われていない。

STEP6:Tip-Edge®最終段階、ツイード・MBTリトラクション段階(2003年8月)

イングリッド(赤)は治療最終段階で、.0215”×.0275”のステンレススチールワイヤーとサイドワインダースプリングを装着。モンセラット(黄)・パメラ(緑)はまだリトラクション段階でバイトも比較的深い。

STEP7:Tip-Edge®治療終了 ─ 開始から15ヶ月(2003年10月)

図15:イングリッド(赤・上段/Tip-Edge®)/モンセラット(黄・中段/ツイード)/パメラ(緑・下段/MBT)

イングリッド(赤)は、治療開始から15ヶ月後にTip-Edgeの装置をディボンド。リテーナーとしてPre-Finisher®を装着開始するが、二名の姉妹はまだ固定装置で治療中である。

STEP8:ツイード・MBT治療終了 ─ 開始から47ヶ月(2005年11月)

図16:イングリッド(赤/Tip-Edge®)/モンセラット(黄/ツイード)/パメラ(緑/MBT)(上から)左=正面、右=側面

イングリッド(赤)はTip-Edgeブラケットを15ヶ月装着後、Pre-Finisher®を1年間使用し保定1年経過した時点の咬合。ツイードのモンセラット(黄)、MBTのパメラ(緑)はブラケットのディボンド時の咬合。いずれも治療開始から47か月後の記録。

STEP8(続き):治療効率の可視化

図18:使用アーチワイヤー本数と治療期間の比較グラフ

三つ子の治療に採用された2つの異なるアーチワイヤースロットと3つのテクニックの相対的な効率を可視化したグラフ。

STEP9:治療後5~7年の安定性確認(2010年10月)

3つの異なるエッジワイズアーチワイヤースロット、アーチワイヤー、テクニック、フォースで治療したことにより、治療後の歯列の変化に相違はあるが、すべて満足のいくものであったことは明らかである。イングリッドの治療期間は二名の姉妹の半分以下であったが、三名とも治療結果は同等であり、満足のいくものであった。

4. 論文解説

同じ不正咬合、同じ抜歯、同じ協力度。過去に例のない「完全な比較条件」が示したもの。

Q. この研究が注目される理由は何でしょうか?

矯正歯科の世界では、異なるテクニックの比較は常に議論の的ですが、条件を揃えた比較は困難でした。本研究では、一卵性三つ子という極めて稀な条件により、骨格・歯槽・不正咬合の状態がほぼ同一の患者に対して、3つの異なるシステム(Tip-Edge®・ツイード・MBT)で同時期に治療を行えた点が画期的です。さらに、各テクニックの経験豊富な指導医の指示のもとで大学院生が施術を担当し、患者の協力度も三名とも同等(10段階評価で8~9)と報告されています。つまり、治療期間の差は患者側の要因ではなく、テクニックそのものの特性に起因すると考察されています。

Q. 治療経過の中で、どのような違いが見られたのでしょうか?

ツイードとMBTは2002年1月に同日に治療を開始しました。Tip-Edge®は半年遅れの2002年7月開始ですが、開始時点で他の二名はすでにアライメントとレベリングの段階を終えていました。にもかかわらず、2003年10月の時点でTip-Edge®は15ヶ月で治療を終了。一方、ツイードとMBTはその時点ですでに22ヶ月の治療を受けており、さらに約8ヶ月の治療が必要と見込まれていました。最終的に二名は47ヶ月を要して治療を終了しています。

Q. Tip-Edge®の治療において特徴的だった点は?

論文によれば、ブラケットの独自デザインにより、ティッピング時に.028”までのワイヤーを使用できるため、結紮の必要性が減りフリクションの軽減につながるとされています。また、.016”のオーストラリアン・アーチワイヤーと軽いフォースの顎間ゴムで咬合挙上を行い、アンカーのためのオーギジラリーが不要であった点が記載されています。ツイードではナンスのホールディングアーチ、MBTではトランスパラタルバーがそれぞれアンカー装置として必要だったとされています。最終段階のアップライトとトルクの付与には、サイドワインダースプリングと.0215”×.0275”のステンレススチールワイヤーが使用され、ディボンド後のPre-Finisher®が保定装置として用いられました。

Q. 治療結果と長期安定性については?

論文では、三名とも治療結果は同等であり、指導医の臨床評価でも満足のいくものであったと報告されています。つまり、いずれのテクニックでも良好な治療結果を得ることができた一方で、治療効率には差が生じたという結論です。長期安定性については、治療後5年および7年の経過観察で、三名とも咬合の安定性、セファロ分析値の維持、骨の成熟度が確認されています。

※本記事は、査読付き学術論文の内容を紹介するものであり、特定の治療法の推奨や効能の保証を行うものではありません。治療結果は個々の症例により異なります。

5. 本研究で使用されたTPOJ製品

製品本研究での使用概要
Tip-Edge®ブラケット.022”スロットのシングルウィングブラケット。ティッピング時に.028”まで使用可能な独自デザイン。
Pre-Finisher®治療後の保定装置として1年間使用。
サイドワインダースプリング最終段階のアップライトとトルク付与に使用。
製品
Tip-Edge®ブラケット
Pre-Finisher®
サイドワインダースプリング
本研究での使用概要
.022”スロットのシングルウィングブラケット。ティッピング時に.028”まで使用可能な独自デザイン。
治療後の保定装置として1年間使用。
最終段階のアップライトとトルク付与に使用。

6. 出典情報

Medellin RF. A Longitudinal Comparative Study of the Orthodontic Treatment of Identical Triplets Using Fixed Appliances. International Journal of Orthodontics. 2012; Vol. 23, No.4 (Winter): 1-8.

著者:Dr. Ricardo Medellin F., DDS, MS(メキシコ国立自治大学大学院/メキシコ工科大学 教授)

※本論文は著者の承認を得て再掲載しています。

7. 免責事項・注意事項

  1. 本記事は、International Journal of Orthodontics(2012年Winter版)掲載の査読付き論文を、著者Dr. Ricardo Medellinの承認を得て医療従事者向けに紹介するものです。
  2. 本コンテンツは特定の治療法または製品の有効性を保証・推薦するものではありません。治療の適否および結果は、個々の患者の状態・条件により大きく異なります。
  3. 本コンテンツは薬機法・医薬品等適正広告基準に基づき、医療従事者向けの情報提供コンテンツとして構成されています。
  4. 掲載した臨床写真は原論文より著者の承認を得て使用しています。個人特定リスクを避けるため、顔貌が写る写真は掲載していません。無断転載・二次使用はお断りします。
  5. 掲載情報は作成時点のものであり、最新の臨床知見とは異なる場合があります。治療の最終判断は必ず担当医師の専門的判断に基づいて行ってください。