症例
Clinical Cases
【症例】8歳・6番近心傾斜に対する『セルフロッキング セパレーティングスプリング(SPS)』を用いた段階的介入
本コンテンツは歯科医師・矯正専門医(医療従事者)向けの臨床情報です。一般の方への情報提供を目的とするものではありません。


東京都 Dr.A.H.
セカンドオピニオンとして来院された、混合歯列期の6番近心傾斜症例です。生活負担にも配慮しながら、まず低侵襲な方法で反応を確認し、段階的に介入を進めました。診断時の考え方と介入の進め方を、経過写真とともに整理します。
【掲載に際しての確認事項】
- 本症例は、患者本人(未成年のため保護者を含む)より掲載同意を取得しています。
- 患者の個人が特定される情報(氏名・住所・医療機関名等)は記載していません。
- 本症例報告は、SPSの臨床的な使用例を医療従事者に情報提供する目的で作成されたものです。
- 特定の治療法または製品を推薦・保証するものではありません。治療結果は個々の症例により異なります。
1. 症例概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 患者 | 混合歯列期(初診時 8歳) |
| 主訴 | 上顎第一大臼歯の近心傾斜(異所萌出) |
| 治療方針 | 低侵襲アプローチによる段階的介入(診断的治療) |
| 使用製品 | セルフロッキングセパレーティングスプリング(SPS)、ブラケット(部分矯正用) |
| 想定リスク | 装着初期の違和感、過度な咬合力による変形・脱離の可能性 |
| 観察結果 | 右側6番の萌出方向の改善が観察された(詳細は臨床経過参照) |
2. 診断と治療方針の選択プロセス
本症例は混合歯列期における、右側第一大臼歯の近心傾斜(異所萌出)を主訴として来院した症例。診断にあたり、臼歯遠心移動を含む包括的治療から低侵襲な局所的介入まで、複数の選択肢を検討した。
診断的治療アプローチの採用
最初の医院ではヘッドギア一択しかなかったが、セカンドオピニオンとして来院されたので、全顎的な包括治療に移行する前に、まず局所的・低侵襲な方法で歯の反応を確認する方針を選択した。混合歯列期においては、残存歯および永久歯の萌出力を活用できる可能性があるため、段階的に介入を進めることで、患者への治療負担を最小限に抑えることができると判断した。
左右での介入方法の違い
右側はSPSの弾性力を用いたアップライトを試みた。左側については、近心傾斜の程度が強く、また乳歯(E)が早期脱落してしまったため、ブラケットを用いたMTM(部分矯正)を選択した。
3. 臨床経過と写真記録
※ 以下の臨床写真はすべて患者本人・保護者の同意を取得の上掲載しています。
STEP 1:初診時(上顎咬合面観)

STEP 2:初診時パノラマX線像

STEP 3:SPS装着後

STEP 4:介入後(右側6番の萌出方向改善確認)

STEP5:治療完了

4. 教科書的な100点よりも、患者に寄り添った今の最適解を。
8歳・6番近心傾斜症例で見せた、ヘッドギア回避へのミニマル・アプローチ
Q.保護者の方はそれに懸念を持たれていた?
ええ。やはり「8歳の子供にヘッドギアを使わせることへの精神的・身体的負担」と、まだ混合歯列期なのでなるべく費用を抑えたい、ヘッドギアではない別の方法もあるのでは?と不安を感じていらっしゃいました。
そこで私は考えました。「いきなりフルスペックの治療をする前に、もっと低侵襲な方法で反応を見る余地があるのではないか」と。
Q.SPSを選択された理由と、左右でアプローチを変えた点について教えてください。
これは「診断的治療(Therapeutic Diagnosis)」のアプローチです。
ご両親には「まずはこの小さなバネ(SPS)を入れてみましょう。まず低侵襲な方法で反応を確認し、必要に応じて次の治療選択肢へ移行する方針とした。もしダメなら、その時に次の手を考えましょう」と伝えました。
右側はSPSの弾性力だけで綺麗にアップライトしました。一方、左側は傾斜が強く、かつEが早期に脱落してしまいSPSをかける隣接歯がなかったんです。そのため左側のみブラケットを用いたMTM(部分矯正)に切り替えました。
「低侵襲」を意識しつつも、必要なメカニクスは躊躇なく使う。その見極めが我々専門医の腕の見せ所だと思っています。
Q.この症例を通じて、先生が伝えたいことは?
矯正治療には「絶対の正解」はありません。
我々医師は、ついレントゲンや模型だけで「完璧な歯列」を作る計画を立てがちです。しかし、そこには「患者さんの生活」や「経済状況」、そして「子供の成長力」というパラメータが存在します。
今回のケースのように、少しの手助け(SPS)をするだけで、正常な発育軌道に戻れることもあります。
最初から過剰介入にならぬよう、常に患者さんの背景を含めた「全人的な診断」を心がけていきたいですね。
5. 臨床的考察
本症例から得られた主な臨床的知見を以下に整理する。
なお、以下の考察は単一症例に基づくものであり、一般化可能性については限定的である。
段階的介入の有効性の検討
混合歯列期においては、永久歯萌出力および成長力を活用した低侵襲アプローチが、一定の症例において有効に機能し得ることが本症例では観察された。ただし、適用可能な症例の条件(近心傾斜の程度、隣接歯の状態、患者の協力度等)を個別に評価することが不可欠である。
SPSの適用条件と限界
本症例では、右側においてSPSを用いたアップライトが実施され、萌出方向の改善が観察された。一方、左側では隣接乳歯の早期脱落によりSPS適用が困難であり、ブラケットによるMTMへ移行した。SPSは適切な隣接歯が存在する症例において使用が検討されるが、その効果は個々の条件により異なる。
患者・保護者への情報提供と同意形成
治療選択においては、治療のメリット・リスク・代替案について患者保護者に説明を行い、インフォームドコンセントに基づいて方針を決定した。患者の生活への影響、経済的負担、および成長期の特性を考慮した全人的アプローチが治療計画立案において重要である。
6. 本症例で使用された製品情報
| 製品名 | 本症例での使用概要 |
|---|---|
| セルフロッキングセパレーティングスプリング(SPS) | 右側第一大臼歯の近心傾斜アップライトを目的として使用。弾性力を利用した局所的介入。 |
| ブラケット(MTM用部分矯正) | 左側において、隣接乳歯の早期脱落によりSPS適用が困難なためMTMに移行。ブラケットを使用した部分的矯正。 |
※ 製品の詳細仕様・適応条件については製品ページをご参照ください。
7. 免責事項・注意事項
- 本症例報告は、セルフロッキングセパレーティングスプリング(SPS)の臨床的使用例を医療従事者向けに情報提供する目的で作成されたものです。
- 本コンテンツは特定の治療法または製品の有効性を保証・推薦するものではありません。治療の適否および結果は、個々の患者の状態・条件により大きく異なります。
- 本コンテンツは薬機法・医療機器適正広告基準(令和2年9月施行)に基づき、医療従事者向けの情報提供コンテンツとして構成されています。
- 掲載した臨床写真は患者本人および保護者の書面同意を取得の上使用しています。無断転載・二次使用はお断りします。
- 掲載情報は作成時点のものであり、最新の臨床知見とは異なる場合があります。治療の最終判断は必ず担当医師の専門的判断に基づいて行ってください。
販売名:TP セルフロッキングセバレーティングスプリング
一般的名称:歯列矯正用スプリング
管理医療機器 医療機器認証番号:21200BZY00474000






